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2012年2月

2012年2月13日 (月)

歌姫を悼む

 ホイットニー・ヒューストンが、歌い手としてどう特別だったか考えている。
上手い歌手はたくさんいるのだが、彼女には真正に特別なものがあった。
強いてひとつ、言葉にするなら、

 「エアインテイク(吸気)から一秒でトップスピード」

みたいなあの歌い方を出来る人を、他に知らない。

ホイットニー・ヒューストンの歌唱は、ウサイン・ボルトの走りと似ている。
トップスピードに乗るまでの速さ、トップスピードになってからのさらなる伸びしろ・・・。

リンクは、「史上最高のアメリカ国歌歌唱」とも言われる、彼女の1991年スーパーボウルでの歌唱。


見るとこの人、「前線兵士の慰問歌手」とかさせたら、最も似合った歌手だな。その意味で、おそろしくアメリカ的な歌手だ。ヴェトナム戦争時分にでもいたらもっと凄かったのかもしれない、と思わされる。
いずれにせよ、幸せだったかは、別として。

http://www.youtube.com/watch?v=5jeUINzHK9o

2012年2月 5日 (日)

「東京プリズン」について

「東京プリズン」って小説は、21世紀の『英霊の聲』(三島由紀夫)を書きたいと思って、書いた。
ひとつの国民や民族が、戦争によるあれだけの喪失を、数十年で忘れたかのようにふるまえるのは、やはり異常なことだ。
そこに、なんとか少しでも、言葉を与えたかった。

あれほどの喪失に言葉をちゃんと与えられなかったことが、今回の震災や原発事故後の世界にどう向きあうかにも、影を落としているんじゃないだろうか。
けっこうまじめに、そう思う。
原子力発電にいたっては、もろに敗戦の落とし子だしね。

「終わらせる」こと。

節分の日に書き終わった長編連載小説「東京プリズン」。
よく考えたら、2年3ヶ月じゃなく2年半やっていました。まあ、似たようなものだけど?

小説は、書き始めるより終わらせるほうがずっとむずかしいと骨の髄まで思い知った作品です。
なんでもそうかも。

長いものは、「終わらせる」意志を持たなければ終わらない、と思う。
でもむずかしいのは、私の意志と同時に、物語それそのものに内在した「進行」もあるということ。

ぶっちゃけた話、<終わり>と書きさえすれば、私が強制的に終わらせることは、いつでもできる。
だけれど、音楽にコード進行があるように、どうしても終わりのコード進行になっていないときは、わかる。
そのとき私が<終わり>と言うのは、嘘になってしまう。

逆に、「まだまだだ」と頭で思ったとしても、終わりのコード進行が来れば、終わるとわかる。
そのとき私にできるのは、従うことだけ。
そういうふうにできたものは、編集者が見ても、いいと言う。

「終わらせる」意志と、ものごとが「終わるにまかせること」。

英語で言うなら、使役動詞 MAKE と LETの兼ね合い。
一見、相反しています。

意図することと、ゆだねるところ。その兼ね合いとプロセスを、信頼できるか、ってところを、この作品では試された気がします。

今回は、途中は凄く苦しんだり不安だったりしたけれど、終わるときには、終わるとあっさりわかったので、終わって虚脱しないかも、と思ったのだけれど、やっぱり少しは、虚脱するものです・・(苦笑)。

応援してくださった方、いらっしゃったら、ありがとう!
心の底からお礼申し上げたいです。

最終回は、これから出る『文藝』2012春号で読むことができます。
良い最終回なので(ちゃんと書けて終われているときは、自分にわかるから)、読んでみてください。
単行本には、数ヶ月でなる予定です。

ひとつのおわりとはじまり

2月3日、「東京プリズン」という小説の最終回を終えた。
2年3ヶ月連載していた(河出書房新社の文芸誌『文藝』)作品で、その象徴的なテーマが「冬を終わらせる」ということだったので、気がつけば節分に終わっていたのが感慨深かった。
翌日、立春は、春がくる日だから。

途中、とうてい終えられそうもなく思えたり、終わろうとしても話のほうが終わってくれないことがあったりして、物書きなんて、最後には根性しかないぜと思った。どんなことも、そうなんだろうけどね。
最後には(あるいはことのはじめに)、決めることと、覚悟しか、無いんだと思う。
いろんなことを教えてくれた作品だった。
小説を教えてくれた作品だったかもしれない。
2年3ヶ月の背景は、私が30年間抱えた問題というか鬱屈というかだったのだけど。
終わるときには、終わるもんだ。
30年前には、人生で30年という時が過ぎるなどと考えなかった。30年抱える問題があるなどとも考えなかった。
そんな人生詐欺だと言いたくなることもあったけれど。
でも、30年前より今のほうがずっといい。


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